DeepSeek が8月13日、API の料金を改定すると告知した。ピークとオフピークという時間帯別の区分を新しく設け、オフピークはピークの半額になる。適用は協定世界時8月16日16時、日本時間では8月17日の午前1時からだ。電気やガスで見慣れた考え方が、AIの請求にも入ってくる。ただし「半額」という言葉が何に対しての半額なのかは、数字を並べてみないと分からない。
まず、誰の請求書の話か
範囲を絞りたい。これは API の料金であって、月額を払ってチャットのアプリを使っている人の請求額が変わる話ではない。効いてくるのは、自分でプログラムから呼び出している使い方——自作の道具、繰り返しの処理の自動化、開発中のもの——をしている場合だ。
そのうえで、この改定は使う側の時間の使い方に値段をつけるという点で、アプリしか使っていない人にとっても先を見る材料になる。料金の作り方は、たいてい上の階層から下の階層へ降りてくる。
「半額」が何に対しての半額か
公式の料金表で新旧を並べると、こうなる。軽いほうのモデルの出力は、いまが100万トークンあたり0.28ドル。16日以降はオフピークで0.66ドル、ピークで1.32ドルになる。上位モデルの出力は、いまの0.87ドルがオフピーク1.98ドル、ピーク3.96ドルだ。
つまり、オフピークの側もいまより高い。軽いモデルで2倍強、ピークなら4倍を超える。「半額」は新しく設定されたピーク料金に対しての半額であって、現行料金に対してではない。料金表には、いまの価格が導入価格や暫定であるといった但し書きは書かれていない。
ピークの時間帯は協定世界時の1時から4時と、6時から10時と定義されている。日本時間に直すと、10時から13時と、15時から19時。日中の仕事時間がそのままピークにあたる。逆にオフピークは、夜の19時から翌朝10時までと、昼の13時から15時だ。
言い方を変えると、日本で働きながら使う人にとっては、いちばん使う時間帯がいちばん高い区分に入る。
時間をずらすことは、ただでは済まない
時間帯別料金そのものは、理屈の通った仕組みだ。混む時間に高く、空く時間に安くすることで、処理を後ろに回せる仕事が実際に後ろに回る。電力会社が夜間料金でやってきたことと考え方は同じで、設備を増やすかわりに使う側の時間を動かしてもらう。
ただ、ずらす側にはずらす側の手数がかかる。夜に走らせる仕組みを作れば、その仕組みの面倒を見る必要が出てくる。失敗したときに気づくのは翌朝になり、直して回し直せばもう一日が過ぎる。返事を待って次を考えるような使い方は、そもそもずらせない。
個人の規模だと、この手数が差額を上回ることもある。月に数百円の差のために夜間実行の段取りを組んで見張るなら、時給に換算した瞬間に逆ざやになる。逆に、決まった処理を毎日まとめて流しているなら、時間をずらすだけで効く。
もうひとつ、まだ分からないこともある。時間帯別の料金を他の提供元も採るのかどうかは、いまの時点では読めない。1社が始めたことが標準になるのか、そこで止まるのかは、これから見るところだ。
自分がAIを使う時間を思い出してみてほしい。朝、通勤の途中、昼休み、夜。そのうち、明日の朝までに終わっていればいいものは、どれくらいあるだろうか?